線維筋痛症ペーシング②独自の状況

セルフケア

第2章 あなた独自の状況

線維筋痛症(FM)の人たちの状況は一人ひとり違うので、FMの自主管理プランは、その人たちの個々のニーズに合わせて作成しなければなりません。以下の質問に答えて「あなた」独自の状況を理解してください。

あなたの重症度は?

重症度には個人差があります。FMの人たちの活動レベルは、一般に50%から75%減りますが、その範囲は広いです。

働き続けることができる者もいれば、生活にある程度支障を来した者、あるいは外出できない者、さらには寝たきりでいる者もいます。

症状のパタ-ンもさまざまです。主訴が疼痛という者もいれば、主訴が疲労、あるいはブレインフォグ(集中力欠如や記憶障害)、睡眠不足という者もいます。

さらに疾患を複雑にしているのは、疾患が時間とともに変化するかもしれないということです。いくつかの症状が消えても、結局新しい症状に置き換わるだけかもしれません。比較的安定した経過をたどる者もいるかもしれませんが、重い症状のときと寛解期の間を揺れ動く者もいるかもしれません。

FMに対する自分のイメージを知るために、自身を「線維筋痛症の評価尺度」で評価してください。活動レベルに基づく評価と、症状に基づく評価の間に食い違いがあるときは、症状の重症度を使って自身を評価してください。我々のプログラムでは、ほとんどの人たちがコースの開始時に自身を25点から45点の間で評価しますが、評価は尺度のほぼ全範囲にわたります。

評価して得た点数を使えば、疾患の重症度と、現在、体が許容できる活動レベルが分かります。例えば、自身を35点(我々のプログラムの平均点)と評価すると、症状を悪化させることなく1日に約3時間活動できることになります。

点数がもっと低ければ、現在、体が許容できる活動レベルはもっと低くなるでしょう。逆に、点数がもっと高ければ、もっと活動できます。

線維筋痛症の評価尺度

100   全治。症状のない正常な活動レベル。

90   時々軽度の症状がある正常な活動レベル。

80   幾つかの症状があるほぼ正常な活動レベル。

70   何とかフルタイムで仕事ができる。ほとんど軽度の症状。

60   1日に約67時間の仕事ができる。 ほとんど軽度から中等度の症状。

50   1日に45時間の仕事、あるいは家で同じような活動ができる。

毎日休息が必要。ほとんど中等度の症状。

40   毎日外出ができる。1日に約34時間の仕事、あるいは家事、買い物

コンピュータを使うような活動ができる。平均して中等度の症状。

30   1週間に数回外出できる。家で1日に約2時間の仕事、あるいは家事、買い物

コンピュータを使うような活動ができる。たいてい中等度から重度の症状。

20   1週間に12回外出できる。1日に1時間以下集中できる。中等度~重度の症状。

10   ほとんど寝たきり。重度の症状。

0   常に寝たきり。

 

あなたの生活状況はどうですか?

線維筋痛症の人たちの疾患の重症度と同様に生活状況も一人ひとり違います。中高年の人が多いですが、若者も、高齢者もいます。結婚している者もいれば、独身の者もいます。子育てをしている者もいれば、子供が独立して家に残された親もいます。親族に援助してもらっている者もいれば、対立している者もいます。財政的に安定している者もいれば、苦闘している者もいます。

自分の置かれた状況を理解するには、あなた独自の生活状況(特に財源と人間関係の面)が疾患にどう影響を及ぼしているか評価する必要があります。

線維筋痛症の一部の人たちは、病気になってからの財政状況が、以前とほとんど変わっていないことに気づきます。おそらくその人たちは、線維筋痛症が軽症で、働き続けることができるのでしょう。

もしくは家族の誰かが働いているか、あるいは前の収入と同じくらいの障害保険金を受け取っているのでしょう。

しかしながら、そうでない人たちにとって財政的な圧迫は大きいです。一部には、ほとんどあるいは全く収入なしで、いざというときの金銭的な蓄えもなく一人で暮らしている人もいます。多くの人たちはこの中間です。ある程度ストレスを感じていますが、病気になる前とほぼ同じようなライフスタイルを維持することができます。

慢性疾患は、新たな負担、そして、新たな緊張、フラストレーションも生み、人間関係を変えます。もしかしたら、あなたは独身で、一人で疾患と闘うかもしれません。たとえ家族と一緒に住むとしても、あなたは孤独感を抱き、理解されていないと思うかもしれません。家族全員が前と違った暮らしをする必要に迫られます。一部の者は、さらに責任を引き受けなければならないかもしれません。人間関係は大きなサポート源、あるいはストレスの原因、もしくはその両方になり得ます。

あなたの対処と考え方はどうですか?

あなたの状況には、二つの特筆すべき要因が含まれます。対処と考え方です。この二つは変えることができます。線維筋痛症を変えることはできないかもしれませんが、疾患にうまく対応するための効果的な方法を習得できます。

学術的な研究によって、慢性疾患のある人々が、我々のような短期間の自助クラスを通じて、効果的な対処技能を習得できることが明らかになっています。このようなプログラムの一つに、関節炎自助コースがあります。1970年代後期にスタンフォード大学で開発され、今までに350,000人以上がコースを取りました。クラスの参加者は疼痛と鬱症状を大いに軽減して、活動レベルを高めました。

UCLAとハーバード大学が、同じようなプログラムで、それぞれ皮膚がんと慢性痛に対して同様の結果を出しています。皮膚がんに対処する6週間のコースを取った人々は、他の皮膚がん患者と比べて平均余命が増えました。また、慢性痛と闘うコースを取った人々は、受診回数を減らし、不安・鬱症状の度合い、そして慢性痛を軽減しました。

この種のプログラムで最も良くなる人たちは、自分で疾患を管理することができると信じる人たちです。この人たちは自分が病気であることを否定せず、「ある日突然完治するはず!」といった非現実的な希望は抱きません。しかし、生活を改善する方法を見付けられると確信しています。

良い対処技能を習得すれば、生活の質が大きく変わり、長期にわたる疾患の経過さえ変わるかもしれません。

長期にわたる疾患を抱えてうまく生活するためには、考え方もまた重要です。役に立つと思われる考え方は、現実的で希望の持てる考え方です。我々はこれを「闘志ある受け入れ」と呼びます。

 

この考え方を持つ人たちは、一見すると相反する二つの考えを併せ持ちます。一方では、自分の病気が長期にわたる疾患であることを認めます。また、妙薬で健康を取り戻せるとも思っていません。

どちらかといえば、この人たちは、自分の生活が変わってしまって、以前と違った暮らしをしなければならないと認めます。他方、自身の努力によって、もっと良くなる方法を見付けることができると確信しています。

慢性疾患を管理できるようになるためには、生活習慣と日常生活を改めて、新しい状況に適応することが必要です。

以下の章は、症状が緩和され気分が良くなるための、あなた自身で出来る多くのアイデアがあります。これらの戦略は、線維筋痛症を治すことを目的にしていませんが、あなたの生活の質と機能レベルを高めることができます。

長期にわたる疾患を自主管理するには、努力と忍耐が必要です。我々のプログラムに参加した多くの人たちは、自分の管理下にある物事に責任を負うことにより、症状レベルと生活の質に大きな影響を及ぼすことができると気づきました。あなたが、我々のプログラムに参加した多くの人たちのようになることを望みます。