線維筋痛症とペーシング⑥疲労と闘う

セルフケア

第6章 疲労と闘う

疲労は線維筋痛症の人々にとっても深刻な問題です。この「疲労」という言葉は、肉体的・精神的な疲憊(極度の疲労)を意味しています。

疲労は健康な人よりはるかに激しく、はるかに長く続きます。

FMの人々の疲労には多くの原因があります。一つは疾患そのものです。

疾患のせいで、人々は日常活動のためのエネルギーがほとんどありません。他の原因として以下のようなものがあります。

過度の努力 →体力の範囲外で生活している

疼痛不快感が続くと、筋肉の緊張を引き起こし、疲れる

睡眠不足→ 回復睡眠でないと、疲労が増す

無活動活動不足により、活動が疲れる

ストレスストレスは筋肉を緊張させる

 憂鬱憂鬱になると、無気力になる

栄養不足正しく食事をしない、あるいは消化不良があると元気がなくなります

 薬の副作用でも疲労が現れます

 上記の疲労の原因に合わせて、疲労と闘う七つの方法があります。

①ペーシング

FMの痛みと疲労をコントロールする、最も重要な秘訣は、活動レベルを自分の制限に合うように調整することでしょう。これはしばしば「体力の範囲内の生活」あるいはペーシングと呼ばれます。

疾患と闘って、プッシュ・アンド・クラッシュの繰り返しになるのではなく、自分の体力を理解して、そしてその制限の中で生活しようと努めます。

ペーシングには、

優先順位を設定する

休憩時間を取り入れる

活動時間を短くする

集中力がいる作業と集中力のいらない作業を切り替える

スケジュールに従って生活する

などがあります。

制限は主に、疾患の重症度によって一人ひとり違います。

Paul Cheney医師はこの取り組みについて、「症状を良くするには、常に個々のニーズに合わせて適切に制限を設定することが重要です」と、うまく要約して言います。

また、精神的な調整にも挑戦します。

生活が変わってしまったことを受け入れ、人生を新しい視点で見ることを覚えます。この受け入れは諦めではなく、今までと違う種類の生活を送る必要があることを認めることです。

その一つは、疾患が課した制限を守ることです。我々のプログラムの一人の言葉を借りれば、「元気になるには、体が送るシグナルを無視しようとすることから、体がストップあるいは速度を落とすように命ずるときに、それをちゃんと聞くようになるまでの考えの転換が必要です」

制限を受け入れて、今までと違う種類の生活を送るようになるこのプロセスは、ふつう数年かかります。

②疼痛と睡眠不足を治療する

疲労は疼痛と睡眠不足によって強まります。本来、疼痛に疲れは付きもので、また疼痛は筋肉の緊張をよく引き起こし、今度はそれが疲労を強めます。体力の回復が見られない睡眠を取れば、朝には就寝する前と同じくらい疲れたままです。前の二つの章に記述した戦略

⭐︎
⭐︎運動、姿勢、動作
⭐︎ペーシング
⭐︎リラクゼーション
⭐︎疲労と睡眠不足の治療
⭐︎温冷治療、マッサージ
⭐︎問題解決
⭐︎楽しい考え
⭐︎肯定的な心の中のつぶやき


を使って疼痛を治療して、睡眠を改善すれば、同時に、疲労軽減のボーナスがついてきます。

疲労と疼痛、疲労と睡眠の関係はそれぞれ反対方向にも作用します。疲労を治療すれば、睡眠と疼痛に良い影響を与えることができます。

疲れていると疼痛感が深まるので、疲労を軽減すれば疼痛感が小さくなります。つまり、疲労と疼痛、疲労と睡眠は、それぞれ相互に作用します。一つの症状を治療すれば、他の二つの症状に良い影響を与えることができます。おそらく、最初に取り組むべき最も一般的な症状は、睡眠でしょう。

③運動する

病気になったことで活動レベルが下がり、活動不足によって体調不良が起きたのならば、運動することで逆方向にねじを回すことができるかもしれません。運動すれば、大幅に体調が良くなり、その結果、運動しないことが原因の疲労が軽減されます。また、疼痛と闘うのにも役立ち、ストレスが少なくなり、気分が良くなります。詳しくは第16章を見てください。

④ストレスを軽減する

18章で概説するように、リラクセーションと他のストレス管理戦略を使うことで、ストレスから生じる疲労と闘うことができます。慢性疾患において、ストレスはあまりにも広く行き渡っているため、そしてストレスが疲労だけでなく疼痛や睡眠不足といった症状を強めるため、多くの患者はストレスと闘うためにさまざまな戦略を使います。他の自主管理戦略のように、ストレス管理戦略を立てれば多数の症状が改善されます。

⑤憂鬱と他の感情に対処する

慢性疾患では感情が強まります。生活の一時的な中断に対する反応として、喪失感、現状と将来への不安をもたらします。感情の強まりは、自主管理戦略、専門家の助け、薬、を組み合わせて使えば治療できます。詳しくは第19章を見てください。

⑥栄養摂取を改善する

線維筋痛症の患者はしばしば、適切な栄養を取るとき、幾種類かの問題に出会います。第一に、エネルギーの制約、食欲不振、あるいは症状の重さが原因で、一部の人々は調理時間を十分に取れず、栄養バランスの取れた食事を取っていないかもしれません。助けを呼ぶこと、前もって食事を冷凍保存すること、そして調理済み食品を使うことが役立ちます。

第二に、FMのほとんどの人々はアルコール不耐性があり、多くの人々がカフェインや甘味料に敏感です。これら物質の摂取量を減らすか、あるいは摂取をやめれば、症状が軽減され、気分の変動が小さくなり、また、睡眠も改善されるかもしれません。

最後に、約3分の1の線維筋痛症患者が、各種の食べ物に対して過敏に反応するか、あるいは栄養を吸収するのに苦労しています。食物アレルギーを防止するのに最も効果的な戦略は「除外食」です。食物アレルゲンとなる食品目を食事から除外していって、そのあと耐性があったとき一つずつ再導入していきます。栄養摂取の詳細については第17章を見てください。

⑦治療薬の変更を検討する

多くの治療薬、例えば、一部の抗鬱薬、疼痛の処方薬などは副作用として疲労を作り出します。治療薬の変更あるいは投薬量の変更が役立つかもしれません。